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刑事事件について、聞き慣れない用語、一般的に使われる意味とは異なる使い方がされる用語、知ってはいるけど確認したい用語があると思います。
そこで、弁護士が刑事事件における手続きの流れに沿って、刑事事件によく使われる言葉の意味を説明します。

目次

身柄の拘束

何らかの犯罪が発生したと思われる場合、警察等の捜査機関は、検察官が起訴・不起訴の判断を行ったり、裁判で必要な証拠を集めたりする必要があります。
しかし、もし被疑者が証拠を隠滅したり(「罪証隠滅」といいます。)、逃げたりしてしまうと、必要な証拠を確保できません。
そこで、被疑者の身体を拘束して捜査することが認められています。

身柄拘束(みがらこうそく)

被疑者の逃亡、罪証隠滅を防止するために逮捕・勾留する事が認められています。

  • 逮捕(通常逮捕)

警察や検察等が逮捕の要件を満たすと考えたときに、裁判所からの逮捕状の発付を経て身柄拘束されることをいいます。拘束されてから最大72時間という時間制限があり、その間に検察官は、勾留の請求をするか、起訴するか、釈放するかを判断しなければなりません。
被疑者の家族には、被疑者が逮捕されていることは警察等から連絡があるものの、その理由等について詳しくは教えてもらえず、接見する事もできません。弁護人になろうとする弁護士は、被疑者がどこにいるかが分かれば原則として接見できます。

  • 勾留

逮捕に引き続き、さらに身体の拘束を継続する必要がある場合に、所定の場所(警察署等)で身体を拘束されることをいいます。検察官が裁判所に勾留することを請求し、裁判官が「勾留状」を発すると、勾留されます。これに対して弁護人は、「定まった住所がある」「証拠隠滅の具体的なおそれがない」「逃亡のおそれがない」等の事情を主張し、勾留の要件が備わっていなかったにもかかわらず、裁判官が誤って勾留したのではないかという異議申立て(準抗告)等をする事ができます。
勾留したのち、検察官は、10日以内に起訴しないなら、釈放しないといけませんが、この期間は、やむを得ない理由があるときに最大10日間延長できます。しかし、ここでも、弁護人は、10日以内に捜査できなかったやむを得ない事情がなかったのに勾留延長決定がされた事を主張して、異議申立て(準抗告)する事ができます。

被疑者(ひぎしゃ)

被疑者とは、犯罪や不正行為の疑いをかけられた人物のことを指します。一般的には容疑者とも呼ばれています。
ただし、被疑者は罪を犯したと疑われているだけで、刑事裁判による有罪判決が確定するまでは、刑罰を科されることはありません。

検察官(けんさつかん)・検事(けんじ)

検察官は、刑事裁判手続を裁判所に求めるかどうかの権限を持っている国家公務員です。
日本では、起訴された事件の99%が有罪となっている事からも分かるとおり、検察が確実に有罪にできると考えた事件しか起訴されません。証拠が十分に備わっていなければ、不起訴となることが多いのです。
また、有罪判決が得られる見込みがあっても、事案の内容、反省状況や示談状況等から起訴しない(起訴猶予といいます)場合もあります。検察の処理事件の半数ほどは起訴猶予です。なので、被疑事実を認めている事件(認め事件と言います)では、この起訴猶予を目指して示談の交渉等をする事になります。

留置施設(りゅうちしせつ)・拘置所(こうちしょ)

留置施設とは、一時的に拘束された人々を収容する場所です。短期間での利用を前提としており、警察署や拘置所などが該当します。

  • 勾留請求(こうりゅうせいきゅう)

勾留請求とは、刑事事件において容疑者が逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合、検察官が裁判所に対し、一定期間拘束することを求める手続きです。

  • 勾留質問(こうりゅうしつもん)

検察官からの勾留請求を受けて、裁判官が被疑者に対しておこなう質問です。具体的には、以下の点が確認されます。

・逮捕の理由となる犯罪が存在するか
・被疑者がその犯罪を行ったことの疑いがあるか
・被疑者を拘束する必要があるか

勾留が適切であると判断されれば、被疑者は勾留されます。

刑事手続き

刑事裁判(けいじさいばん)

刑事裁判とは、犯罪行為を疑われる者(被告人)の責任を明確にし、適切な処罰を決定する場です。法廷では検察官が被告人の犯した罪について証拠を示し、弁護人は被告人の言い分を主張し、反論します。これらを踏まえた裁判官が下した判決により、有罪となれば刑罰が科せられ、無罪となれば被告人は釈放されます。

起訴(きそ)・不起訴(ふきそ)

起訴とは、検察官が、裁判所に対し、罪を犯したと考える被疑者を被告人として適正な処罰を求めることです。有罪・無罪や刑の重さを決めるためには、原則として刑事裁判の適正な手続を踏む必要があります。
これに対し不起訴とは、検察官が被疑者を裁判にかけないと決めることです。その理由には、証拠が不十分で罪に問えないなど、いくつかの理由があります。

詳しくはコラム「不起訴とは~前科をつけないために弁護士がお手伝いできること」を参照してください。

処分保留(しょぶんほりゅう)

処分保留とは、刑事事件において、捜査機関が証拠不十分や被疑者の更生の見込みから、起訴か不起訴かの判断を一時的に見送ることです。処分保留は一時的な措置であり、後に起訴されることもあります。

略式起訴(りゃくしききそ)

略式起訴とは、被疑者の同意を経て、書面による審理のみで罰金もしくは科料の刑罰を言い渡す特別な起訴方法です。主に軽微な犯罪に対して用いられ、以下の特徴があります。

・起訴状の提出が簡略化される
・刑事罰の範囲が限定される
・速やかな解決が期待できる

ただし、法廷での反論ができないため、被告が罪を認めている前提があり、前科もつきます。

保釈(ほしゃく)・保釈金(ほしゃくきん)

保釈とは、刑事被告人が裁判の期間中に一定の保証金を支払うことで、身柄拘束から一時的に解放される制度です。
保釈金は、被告人が逃亡しないことを保証するための金額であり、逃亡等がされず、裁判が終結した際には返還されます。

  • 有罪(ゆうざい)

裁判所の判決などにより犯罪の存在が認められることです。有罪が確定すると刑罰が科せられます。

  • 執行猶予(しっこうゆうよ)

執行猶予は、刑の執行を一定期間猶予し、その間に再犯しなければ、刑を免れることができる制度です。

  • 実刑(じっけい)

執行猶予が無く、直ちに刑務所に収監されてしまう判決です。実刑判決をうけるケースには

・殺人や強盗などの重罪
・再犯である
・被害者が多く、被害額も大きい(詐欺罪など)

といったものがあげられます。

  • 罰金刑(ばっきんけい)

罰金刑は、犯罪に対する制裁として、一定の金額を支払うことを命じる判決です。軽微な事件に対して用いられることが多いです。有罪判決により課せられる刑なので、前科はつきます。

弁護人(べんごにん)を選任(せんにん)することができる権利(けんり)

刑事訴訟法において、被告人には弁護人を選任する権利が与えられています。これは、裁判において適切な弁護を受けるための大事な権利です。

私選弁護人と国選弁護人がおり、その区別はコラム「逮捕されたらどうする?弁護士の呼び方とタイミング解説」をご参照ください。

供述調書(きょうじゅつちょうしょ)

供述調書とは、犯罪捜査において、被疑者や証人からの供述内容を記録した公文書のことです。主に、以下の情報が記載されています。

・供述者の氏名や住所
・聴取を行った捜査官の名前
・供述内容や証言の詳細

裁判において重要な証拠の一つとされることもあります。供述調書を完成させるためには、内容に問題が無いことに同意した被疑者や証人の署名と押印が必要です。なお、身柄拘束されている場合は押印ではなく指印となります。署名押印をした後での訂正は困難であることに注意が必要です。

黙秘権(もくひけん)

黙秘権とは、法律上認められた権利の一つで、自己に不利益な供述(裁判官や検察官の質問に答えること)を強制されないことを保証するものです。
そのため、黙秘したことをもって不利益に扱われることは禁止されます。

接見禁止(せっけんきんし)

勾留中の被疑者や被告人が、外部の人と口裏合わせや証拠隠滅をする恐れがあるとされた場合に、裁判官の職権で、これらの人との面会や書類の受け渡しが禁止されることです。なお、接見禁止中でも弁護人には会えます。また、事件と無関係な家族や会社の上司等との接見まで制限する必要はないため、弁護人を通じて接見禁止の一部解除を求めることも可能です。

  • 保護観察(ほごかんさつ)

保護観察とは、罪を犯した人または非行のある少年が、社会の中で更生するように、保護観察官や保護司による指導と支援を行うものです。
刑務所等の矯正施設で行われる施設内での処遇に対し、施設外、つまり、社会の中で処遇を行うものであることから、「社会内処遇」といわれています。

  • 児童自立支援施設送致(じどうじりつしえんしせつそうち)

児童自立支援施設とは、犯罪などの不良行為や非行のある少年、家庭環境等から生活指導を要する少年を入所または通所させ、必要な指導を行って自立を支援する児童福祉施設のことです。施設への入所については、児童相談所の措置によるものが多いですが、少年審判の保護処分による場合もあります。少年審判で、少年に対して児童自立支援施設で一定期間生活してもらうという内容の保護処分がなされることを、「児童自立支援施設送致」といいます。

  • 少年院送致(しょうねんいんそうち)

少年院は、家庭裁判所の少年審判で「少年院送致」という保護処分がなされた少年に対し、その健全な育成を図ることを目的として、矯正教育や社会復帰支援等を行う法務省所管の施設です。
少年院は、少年の年齢や心身の状況により、第1種、第2種及び第3種の3つの種類に分けて設置されており、どの種類の少年院に送致するかは、家庭裁判所において決定されます。

  • 試験観察(しけんかんさつ)

家庭裁判所の少年審判において、少年に対する処分を直ちに決めることが困難な場合に、少年を適当な期間、家庭裁判所調査官の観察に付すことがあります。これを試験観察といいます。
試験観察においては、家庭裁判所調査官が少年に対して更生のための助言や指導を与えながら、少年が自分の問題点を改善していこうとしているかといった視点で観察を続けます。この観察の結果なども踏まえて裁判官が最終的な処分を決めます。

  • 検察官送致(けんさつかんそうち)・逆送(ぎゃくそう)

少年審判において、家庭裁判所が,保護処分ではなく,懲役,罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に,事件を検察官に送るものです。逆送された事件は,検察官によって刑事裁判所に起訴され,刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されます。
事件によっては、家庭裁判所が原則として検察官送致をしなければならないとされているものもあり、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件」がこれにあたります。また、18歳以上の特定少年については、さらに、「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件」も原則検察官送致の対象になります。

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