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犯行を認めているときは弁護人は必要ないか?
刑事事件の弁護人の活動というとどのようなものが頭に浮かぶでしょうか。裁判もののドラマなどを見ると、一貫して無実を主張する被告人を弁護人も信じて励まし、ついには法廷で被告人のアリバイを証明する…というような内容のものを見かけたりします。
それでは、このように否認している場合でなく、犯罪を行ったことは間違いない、逮捕された理由となる被疑事実には争いがない、という場合はどうでしょうか。素直に認めている以上、通常は捜査官から嘘の自白を強要されるおそれも少ないし、弁護人がいてもいなくても変わらないのではないか、という気がするかもしれません。
しかし、そうではありません。このような自白事件の場合でも弁護人の活動は重要です。今回は、ドラマでは扱われそうにない自白事件での弁護人の活動についてお話ししたいと思います。
例えば、Aさんが酒に酔った勢いで一緒に飲んでいたBさんを殴って怪我をさせてしまい、現行犯逮捕されてしまった場合を考えてみます。弁護の依頼を受けた弁護人はどのような活動をするのでしょうか。
まず、Aさんの身体が拘束されている場合は、身体の拘束を解くことを目指して活動します。Aさんが会社勤めをしている場合、身体拘束が長引けば、捕まっていることが会社に知れ渡ってしまい、大きなダメージを受けることが考えられます。
逮捕後、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがあれば、さらに勾留という身体拘束を受けることになります。原則10日間ですが、10日を限度にさらに延長されることもあります。
そこで、弁護人は身元引受人を確保するなどして、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれはないとして、勾留をしないよう働きかけをしていきます。また、勾留されてしまった場合には準抗告という不服申立を行います。
また、起訴(裁判にかけられること)されて有罪になれば、前科がついてしまいます。
そこで、弁護人としてはAさんが起訴されないよう活動することになります。
Aさんを起訴するかしないかは担当の検察官の裁量に任されており、検察官は様々な事情を考慮して、起訴するかしないかを決定します。そこで、弁護人としては、Aさんに有利な事情を主張していく必要があります。
まず、Aさんに被害弁償をするだけの資金があるのであれば、弁護人は早急に被害者のBさんと連絡をとり、示談交渉をすることになります。
また、Aさん本人が反省しているのであれば、反省文を書いてもらうこともあります。
そして、Bさんとの間で無事示談が成立すれば、担当の検察官と面談するなどして、示談が成立したことや、Aさんが深く反省していることなどをアピールし、起訴しないよう働きかけていくことになります。
以上のように、自白事件の場合にも弁護人の活動は非常に意味のあるものです。身近な方が逮捕された場合など、遠慮なく当事務所までご相談ください。