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経歴詐称はクビにつながる場合も! その問題点

山下江法律事務所

 「採用難の時代だから、少しだけ自分の経歴を誇大化して応募した」
 「働き口がなかったから、経歴を少し脚色して履歴書を書いてしまった」

 このような経験を持つ人もいるかもしれません。しかし「経歴詐称」は、非常に大きな問題といえます。これについて解説していきます。

経歴詐称とは何か

 ごく基本的なことではありますが、まずは、「経歴詐称とは何か」から解説していきましょう。

 これは、主に「就職などに代表される労働契約締結の際に、雇用される側が雇用する側に対して、自己の職歴や学歴、犯罪歴、また職位などを偽ったり隠したりすること」をいいます。なお、資格取得のときに職歴(主に年数)をごまかすことも「経歴詐称」にあたりますが、ここでは「労働契約の締結や就職活動の最中に行われる経歴詐称」と限定してお話ししていきます。

 経歴詐称のパターンは、いくつかあります。

・学歴

 高卒であるにも関わらず大卒であるとしたり、出た学校の名前を違うものにしたり、入学年や卒業年を変えて記載することなどをいいます。なお、入学年や卒業年を意図的に変える理由としては、「浪人している期間があった」「実は留年して、2年生をもう1回やり直した」などをごまかすためなどが挙げられます。おそらく、「経歴詐称」と聞いてもっともイメージしやすいのが、この「学歴」のパターンなのではないでしょうか。

・資格

 実際には有していない資格を有しているかのように見せるために、履歴書に記載するものです。また点数制を採るもの(TOEICなど)では実際の成績よりも良い成績を書き込むこともあります。

・職歴

 職歴を詐称する理由は、大きく分けて2つです。1つは「転職回数を実際よりも少なく申告したり、在籍期間を長くしたりする。あるいは在籍していたことを表記しない」というもの、もう1つは「過去にその仕事に就いていない(あるいは求められる経験を積んでいない)のにもかかわらず、就いていたとして記載する場合」です。前者は「あまりにも頻繁に転職をしていたり在籍期間が短すぎたりした場合、いい加減な人間だと考えられて不採用になりそう」という理由で、後者は「未経験と書いたり、求められている条件をクリアしていなかったりしたら不採用になる」という理由であることが多いといえます。

・雇用形態や年収、昔の立場など

 正社員ではなかったにも関わらず正社員であると記載したり、転職後の収入を良くするために前職の年収を高めに申告したり、前職は平社員であったにも関わらず管理職であったと申告したり……などのようなケースが考えられます。

・犯罪歴

 昔、罪を犯しており、かつそれを記載する欄があったり口頭で問われたりしたにも関わらず、「犯罪歴はない」などとするものです。「犯罪歴のある人間は雇いたくない」と考えるのが会社としてごく自然な判断であることから、雇用される側がこれを隠して応募するのです。

 ここで述べた例はほんの一例です。経歴詐称を行う人間にはそれぞれの事情があり、それぞれのやり方も異なります。ただ、この「経歴詐称」は後々非常に大きな問題となる可能性が高いといえます。次の項目では、「経歴詐称をし、それがバレた場合はどうなるか」を解説していきます。

経歴詐称がバレた場合のペナルティ

 「経歴詐称という重大なウソがバレたのだから、見抜いた時点で会社側は経歴詐称をした側をクビ(懲戒解雇)にする権利がある」と考えるかもしれません。

 実際、経歴詐称は非常に大きな問題です。「この人は、この資格(あるいは経験、実績)を持っているから採用したのだ」という場合、その部分に偽りがあれば、期待していた働きをしてもらうことはできません。また、経歴詐称をしている社員だと分かっているにも関わらず雇い続けた場合は「ウソをついているのにクビにもならないのか……」とまじめに働いている社員が反発心を抱くことは容易に想像できます。加えて、そもそも経歴詐称をするような人間を信用することも難しく、その人に仕事を任せることは、会社にとってのリスクにもなります。

 しかし、それでも、「経歴詐称が分かった時点で懲戒解雇にすること」は難しいです。もう少し正確に言うなら、「懲戒解雇をすることができるのは、重要な経歴の詐称に限られる」ということです。たとえば、もともと「学歴不問」として募集していた求人広告を見て応募してきた人が、「実は大学を中退していたが高卒であるとして応募していた」などのような場合m懲戒解雇にするのは難しいでしょう。

 ただし、重大な経歴詐称の場合は懲戒解雇にすることも可能です。たとえば以下のようなケースです。

1.学歴が重要な判断基準になる仕事において、学歴の詐称を行った場合

 企業側としては、「現場作業見習いとして採用するのは高卒以下のみ」としていたにもかかわらず、大学中退の経歴を持つ者が経歴詐称を行い、採用されたのち経歴詐称がバレて懲戒解雇となった事案があります。元従業員はそれを不満として争いました。1975年のこ都ではありますが、判決では「懲戒解雇は妥当である」とされて、従業員側の訴えは退けられました。

2.職歴を詐称しており、求められる仕事ができなかった

 経歴・職歴が求められる仕事であり、かつ求人票にそう記載していたにも関わらず、「その仕事ができる」として職歴を偽り採用されたとしましょう。しかし実際には、その仕事をほとんどこなすことができなかった……などのような場合も、懲戒解雇が妥当とされる確率が高いといえます。

3.犯罪歴を隠していた

 「犯罪歴があり、それが問われているにも関わらず、犯罪歴を隠匿していた」という場合は、重大な経歴詐称と判断される確率が高くなります。消滅した前科の場合などは、この限りではありませんが、そうではない場合は懲戒解雇に処される可能性が高いといえるでしょう。

 経歴詐称は、企業側にとって大きなリスクとなります。また経歴詐称をして採用された従業員側にとっても、「いつバレるのだろう」「バレたらどうなるのだろう」「十分な仕事ができない」という心配事を抱えて仕事を行うことは大きなストレスとなります。双方のためにも、経歴は正直に記すようにしましょう。

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