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軽い気持ちで…自転車の窃盗罪について

山下江法律事務所

 軽い気持ちで行う「自転車の窃盗」は、大きな問題を引き起こします。それについて解説します。

自転車の「チョイ借り」 は窃盗罪にあたることもある

 「自転車のチョイ借り(ここでは、無断で勝手に自転車を持っていき、しばらく使ったのち、元に戻すことをいう)」は、「どうせ返すのだからいいだろう」「盗みっぱなしにするのではなく、用が済んだら返すから問題ない」と考える人もいます。実際に「自転車をチョイ借りして乗り回した」という話を耳にすることはありますし、このような行為をする人間のほとんどは、特に罪悪感を持たずに行っているケースが多いと考えられます。

 2020年9月に報じられたニュースでは、「自転車を無断で借用した人間が、占有離脱物横領罪(横領罪の一種であり、遺失物等横領罪ともいわれる。放置自転車などに乗って帰宅した場合などに問われる可能性があるもので、懲役刑または罰金もしくは科料に処されることがある罪)に問われたが、無罪判決になった」として報じられました。

 このケースでは、不法領得の意思(本来の権利者を排除して他人の財物を自分の所有物とし、また経済的用法に従って処分したり利用したりしようとする意思)が認められなかったため、占有離脱物横領罪には相当しないとされたのです。

 ただ、このような判決をもって、「自転車は、チョイ借りしたくらいでは犯罪にあたらない」と考えるのは間違いです。一般的な自転車のチョイ借りとは異なり、この事案では、「そもそも、その自転車は盗難自転車であったこと」が判断を分けた理由のうちのひとつと考えられました。また、施錠をされていない自転車であったことも、ひとつの理由と考えられます。ちなみに、この判断も、「裁判官によって意見が分かれる」と評価されています。

 一方、「その人が正当な手段で所有していた自転車」がチョイ借りされた場合では、また事情が異なります。「少し借りるだけだったからいいだろう」と言い訳をしたとしても、それが通じず窃盗罪に問われたケースも過去にあります。そのケースでは、他人の自動車を4時間程度の使用した場合において「窃盗罪だ」と判断されました。

 自転車は自動車よりも安いものではありますが、何度も繰り返せば逮捕されたり起訴されたりすることもあります。

 「自転車の、しかもチョイ借りだったから絶対に罪には問われない」「若気の至りで少し借りただけで、きちんと返したのだから大丈夫だろう」「子どものころにやったけれどおとがめなしだったから、大人になってからやっても問題ない」と考えるのは間違いです。自転車のチョイ借りでも窃盗罪などにあたることがあります。そもそも、自転車を持っていかれると、乗っていた人は非常に困ってしまいます。自転車のチョイ借りは、処罰的な意味でも、また道徳的な意味でも、決してやってはいけません。

窃盗罪の量刑について~執行猶予と示談

 上記のことを念頭において、「子どもが自転車のチョイ借りをやっていた」「疲れていたときに軽い気持ちでやってしまい、窃盗罪にあたるとされた」などのような状況に陥ったときの考え方についてみていきましょう。

・窃盗罪の量刑

 まず窃盗罪は、「財産犯」に分類されます。刑法第235条においてその定めがあります。窃盗罪は、上でも取り上げた「不法領得の意思」が認められて初めて成立します。

 窃盗罪で逮捕された場合の量刑は重く、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。科料(1,000円以上10,000円未満)ではなく、「懲役」あるいは「罰金」となるのです。

 また自転車を盗み出す際に、人の家の敷地などに入った場合は、住居・建造物侵入罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)とされる場合もありますし、施錠されているにもかかわらず、そのカギを壊して自転車を盗み出そうとした場合は器物損壊罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)とされる可能性があります。

 窃盗罪の場合は、時効があります。窃盗罪の公訴時効は7年であるため、これを過ぎた場合は、罪に問われることはありません。ただし民事の場合は、窃盗が行われてから20年あるいは被害者が被害を知ってから3年以内であるのなら、損害賠償請求がなされる可能性はあります。

 なお未成年であっても、逮捕される可能性はあります。14歳未満は刑法上の犯罪として裁かれることはありませんが、少年事件として特別な手続がとられます。その手続には、少年院送致という処分も含まれます。

・執行猶予と示談

 窃盗罪の場合、執行猶予となる可能性もあります。特に犯行に悪質性が認められず、かつ被害金額が大きくないと裁判で判断されたときは、起訴されたとしても、執行猶予判決が出る場合もあります。

 不起訴で済ませたい場合、あるいは実刑判決ではなく執行猶予判決を求める場合は、「被害者との示談」が非常に重要になってきます。示談はあくまで民事の話であるため、たとえ示談が成立したとしても実刑判決が出る可能性はゼロではありません 。ただ示談が成立した場合、特に窃盗罪においては「被害が回復している」と判断されますし、また被害者も「お金が支払われ、加害者も真摯に反省している」と受け取ってくれれば、被害者側の持つ処罰感情が大きく緩和されます。被害者側が「加害者は反省もしているし、被害も回復したからもういい。加害者を強く処罰することは望まない」という内容の文言を示談書に盛り込んでくれれば、考えた場合は、刑罰が軽くなるのが通常です。

 このようなことから、起訴前・起訴後を問わず、示談を成立させることは極めて重要になってきます。示談を成立させることで不起訴となる可能性が高くなりますし、起訴された後であっても示談を成立させることで受ける刑罰が軽くなる可能性が高くなります。

 起こしてしまった事件は事件として捉え、罪を反省し、真摯に被害者と向き合い、示談を成立させることが非常に重要です。示談を成立させたい場合は、交渉のプロフェッショナルである弁護士に相談してください。

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