人から脅されたり怒鳴られたりするのは非常に怖いものです。このようなことをされた場合、おびえてしまって反論ができなくなって屈してしまう人もいることでしょう。
しかし一度屈してしまうと、相手がさらにつけあがる可能性があります。法律を知り、戦うすべを身につけることは、自分の体や心を守ることに繋がります。
ここでは、「脅迫罪」と「恐喝罪」を取り上げ、それに対して戦うための方法をお教えします。
恐喝罪とはいったい何?脅迫罪と恐喝罪の違い、罰則について
「脅迫罪」と「恐喝罪」は、「相手を脅すこと」という意味では一緒です。しかしこの2つには、明確な違いがあります。
「脅迫罪」の方は、
“一 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
二 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
としています。
対して恐喝罪の方は、
“人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
としています。
つまり、脅迫罪の方は相手を脅すだけにとどまりますが、恐喝罪では相手を脅して財物(お金など)を出させることをいうのです。
この違いがあるため、恐喝罪の方が脅迫罪よりも重い罪だとされます。また恐喝罪の場合は、「既遂に至らなかった場合」でも罪に問われます。たとえば、「1000万円をふりこまないとお前の家に火をつけてやる」と言われた人がすぐに警察に行った場合などは、「恐喝未遂」にあたります。
恐喝罪・脅迫罪の被害者となった場合の戦い方を知っておこう
脅迫罪や恐喝罪は、れっきとした犯罪行為です。そのためそれぞれに罰則が定められています。
脅迫罪の場合は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。対して恐喝罪の場合は、10年以下の懲役刑となります。この点は大きな違いです。脅迫罪の場合は裁判に発展することなく処罰が下されて終わり……となることもありますが、恐喝罪の場合は法廷で裁判を受けることになります。
相手になんらかの罰則を科すことができれば、相手はあなたを「やっかいな相手」と判断することでしょう。相手につけこまれるような隙をつぶしたり、二次被害を防いだりする意味でも、このような法律的な知識に基づいて相手に対抗していくのは極めて有効だといえます。またほかの人が被害者になる可能性を低くすることができるかもしれません。
相手から脅迫・恐喝を受けたときには、まず証拠を保管・収集しましょう。
文書で届いたのならばその文書を保存しておきます。またメールでの脅しやSNSでの脅迫・恐喝を受けたのならばその画面を保存しておきます。言葉による脅迫・恐喝の場合は録音や録画が有効です。脅迫・恐喝をしてきたことを知っている第三者の証言も、戦っていくうえで非常に有用です。これらを集めて警察に相談しましょう。
ちなみに、「お前やお前の家族を殺す」といった直接的な言葉のほかに、
・お前の家を燃やすぞ
・お前の貯金口座を奪ってやる
・お前の悪評をネットにばらまいてやる
・子どもを誘拐してやる
などのような言葉も証拠となるので集めておきます。
証拠がない場合でも、警察や弁護士に相談に行くのが良いでしょう。次に脅迫・恐喝をされたときに証拠がとりやすくなりますし、有効な対策を講じてくれます。また、「公的な機関に相談していること」は自分自身の心の安定にもつながります。そしてこの「心の安定」はより良く戦っていくための強い武器にもなりえます。
ちなみに、脅迫・恐喝罪では慰謝料の請求もできます。このときも弁護士が頼りになります。証拠がなくても相手に対して慰謝料の請求を行うことはできますし、これによって「戦う意志」を明示することもできます。
脅迫・恐喝に一度屈してしまうと、相手は二度、三度とさらなる理不尽な要求を突き付けてくることもあります。そのような状況を避けるためにも、屈せずに戦っていくことが必要なのです。
つい感情が高ぶって……恐喝罪・脅迫罪の加害者になってしまった場合の対応方法
ここまでは「被害者」の立場でお話をしてきましたが、自分が加害者になってしまった場合はどうすればよいのでしょうか。
上でも述べた通り、脅迫罪・恐喝罪は犯罪です。そのため、逮捕されることもあります。逮捕された場合は最大で23日間拘留されることになります。またこれが会社や学校に知られることで、会社・学校を辞めさせられることもあります。このため、逮捕された場合はすぐに弁護士に相談をするようにしてください。弁護士は、依頼してきた被害者側の味方であると同時に、依頼してきた加害者側の益になるために動く存在でもあります。
弁護士を挟むことで、被害者と示談を行える可能性が高くなります。示談を行いこれを成立させることによって、最終的に不起訴となることも多いといえます。特に、
・脅迫罪であり
・初犯であり
・真摯に反省していることが伝わっていて
・金額も十分なものであり
・示談が成立している
という場合は、起訴に至ることはほとんどないといえます。実際、脅迫罪の半分は不起訴となっています。
示談を成立させられるかどうかは、不起訴となるかどうかに大きく関わってきます。しかし気持ちが焦るあまり、加害者が直接被害者に示談を申し出ることについては慎重になった方がよいでしょう。被害者が、「怖いことを言ってきた人が、何回も電話をかけてくる」「また脅されるのではないか」という恐怖心を抱くことにもなりかねないからです。そのため、示談は弁護士を介して行うようにするのが原則です。
脅迫罪や恐喝罪は、被害者を怖がらせ、委縮させるものです。
しかしきちんとした戦い方を知っていればこれに立ち向かっていくことができます。
また自分が加害者となった場合でも、適切な対応をとることで起訴を避けられる可能性が高くなります。
そしてそのための手助けとなるのが、弁護士なのです。