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暴行罪に問われる行動とその罰則について

山下江法律事務所

 世の中にはいろいろな犯罪があります。
 そのなかには聞きなじみのあるものもあれば、あまり耳にしたことのないものもあるでしょう。
 また、「耳にしたことはあるけれど、それほど詳しくは知らない」というものもあります。

 今回取り上げる「暴行罪」は、恐らくそのような「耳にしたことはあるけれど、それほど詳しくは知らない」ものでしょう。

 ・暴行罪の成立要件
 ・暴行罪だと判断された場合に受ける可能性のある刑罰
 ・暴行罪と関連しやすい罪

について解説していきます。

暴行罪の概略と成立要件

 まず、暴行罪の概略と成立要件についてみていきましょう。

 暴行罪とは、“人の身体に対し不法に有形力を行使し、傷害するにはいたらないときに成立する罪”とされています。これは刑法208条に記載されているもので、非親告罪です。つまり、被害者からの訴えがなくても成立する罪です。

 暴行罪の具体的な中身としては、「相手を殴る」「相手を叩く」「相手を蹴る」などのような、暴力行為が挙げられます。これは多くの人にとって想像しやすいものでしょう。
 しかし暴行罪の場合、相手の体に直接触れていなくても成立する可能性があります。
 たとえば以下のような行為も、「暴行罪である」と認定されることがあるのです。

 ・相手の胸倉をつかみ上げた
 ・水をかけた
 ・嫌がらせ目的で、狭い部屋のなかで大きな音で楽器をかき鳴らした
 ・相手に当たらないように、日本刀を振り回したり石を投げつけたりした

 また近年悲惨で重大な結末をもたらした「あおり運転」もまた、暴行罪の管轄となります。嫌がらせを目的として相手の車に幅寄せなどをした場合、この暴行罪に問われることがあります。
 なお当然ながら、「つまずいた拍子に、持っていた紙コップが跳ね上がり、意図せずして周りの人に水をかけてしまった」などのようなときは暴行罪には問われません。ここには「故意に水をかけてやろうと思った」などのような「意思」が存在しないからです。

 暴行罪を語るうえで外すことができない要件として、「傷害罪とどう違うのか」があります。
 上でも述べたように、暴行罪とは「傷害するにはいたらないときに成立する罪」です。
 傷害罪が成立する要件としては、「相手にけががあったこと」が必要となりますが、暴行罪の場合はこの限りではありません。
 「軽くはたいただけなのでけがはしていない」「水をかけただけなので、相手は肉体的な損傷は負っていない」などのようなときは暴行罪になります。反対に、「相手を殴り、全治2週間のけがを負わせた」などのような場合は傷害罪となります。

 なお、「傷害罪か、それとも暴行罪か?」を判断するためには、医師の診断が必要です。

暴行罪と判断された場合に受ける可能性のある刑罰

 暴行罪は刑事罰であり、また親告罪ではない(ただし実際には、被害者の告訴・被害届の提出によって暴行罪で立件されることが圧倒的多数ではあります)ものです。暴行罪には当然刑罰が用意されています。

 暴行罪の刑罰は、

・2年以下の懲役
・30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

とされています。

 「懲役」「拘留」「罰金」「科料」は、少しわかりにくい表現ですからこれについても解説しましょう。

 「懲役」という言葉は、多くの人にとって聞きなじみのあるものでしょう。刑務所に入れられて服役をすることを指します。
 懲役と似た言葉に「拘留」がありますが、拘留の場合は期間が30日未満と定められています。また刑務所だけでなく、拘置所に収監されることもあります。
 なお刑務所と拘置所の違いは、「刑務所は刑事罰として懲役刑の判決を受けた人間が入る場所」であるのに対し、拘置所は「刑がまだ執行されていない人間や、裁判の結果がついていない人間」が入るところです。また、拘置所は「裁判中に、自分の不利になる証拠を隠滅したり、逃げたりしないようにすること」を目的とした収監施設でもあります。ちなみに拘置所は、死刑囚が(まだ「死刑」という刑が執行されていないということで)入ることもあります。

 「罰金」と「科料」についても見ていきましょう。これは単純に「金額の大きさ」で決められるものです。10000円以上の財産刑を「罰金刑」といい、それ未満の金額の財産刑を「科料」といいます。

 暴行罪の場合は、「若しくは」「又は」とあります。このため、暴行罪=即懲役刑(あるいは拘留)とはなりません。財産刑である罰金刑か科料に処されて終わりということもありえます。
 また、そもそも刑事罰にまで至らない可能性もあります。特に、

・初犯であり
・相手も家族や友人などのよく見知った相手
・水をかけたなどの比較的軽微なもの

などのような場合はそもそも逮捕さえされることなく、説諭・注意で終わることもあります。

 傷害罪の場合は15年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑が科せられることを考えれば、傷害罪と暴行罪の間には大きな隔たりがあるといえるでしょう。

知っておきたい、暴行罪と関連しやすい罪について

 暴行罪と傷害罪のことを対比させて語ってきましたが、それ以外にも暴行罪と関連する罪はあります。

 たとえば、「相手に暴行を加えていたら、(殺意はなかったにも関わらず)相手が死んでしまった」などの場合は傷害致死罪となります。そこに殺意があった場合、既遂ならば殺人罪、未遂ならば殺人未遂となります。なお相手を傷つける意図(傷害の故意)さえもなかったにも関わらず相手を死に至らしめてしまった場合(携帯電話を見ながら自転車を運転していて、歩行者とぶつかって相手が亡くなってしまったなど)は過失致死罪に問われます。

 これらは、

・もたらした結果の重さ
・殺意あるいは傷害を負わせようとする意思の有無

で判断されます。

 暴行罪自体は、それほど重い刑罰が科せられる罪ではありません。しかし被害者となった人の恐怖は大きいものですし、また暴行罪だとなれば前科がついてしまうこともあります。暴行罪は、被害者の人生も加害者の人生も狂わせるものです。
 「暴行罪にあたることをされた」あるいは「暴行罪にあたると判断されるかもしれないことをしてしまった」という場合は、弁護士に相談してください。

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