「万引き」は、犯罪行為のうちのひとつです。スリルを味わうためであったり、また出来心でやってしまったりする人間もいますが、この万引きの被害は非常に大きいものです。また、犯罪者側にも大きな罰が下されます。
今回はこの「万引き」を取り上げ、その被害状況や捕まったときの経緯について述べていきます。
万引きの被害額は年間で4600億円を超える
まずは万引きの認知件数についてみていきましょう。
平成30年の警察白書によれば、万引きの認知件数は年間で10万8009件にものぼっているということです。またそのなかの75,257件が検挙されています。検挙人数も65,514人となっており、多くの万引き犯が検挙されていることがわかります。検挙率は70パーセント近くにも達する犯罪なのです。
「万引きは若い世代が行うもの」「スリルを求めて、学生が行う犯罪」「若い女の子が化粧品などをぱちる(俗語で「盗む」の意味) もの」という認識を持つ人もいますが、これは誤りです。
万引き犯には高齢者が多く、万引き犯全体の実に4割近くを占めています。このため、「万引きの犯人は、高齢者が多い」と判断されます。
「人を傷つける犯罪ではないから大丈夫」「どうせお店側は保険に入っている。万引きをしても、保険から保証されるから大丈夫なんでしょう?」「盗む物も、小さくて安い物。数十万円もする物ではないから、お店側にだってそれほど損害はない」「きちんと防犯していない店側が悪い」などのように考える万引き犯もいます。
しかし、1年間の万引きの年間被害額は実に4600億円をこえるといわれています。これは、特殊詐欺(いわゆる「振り込め詐欺」など)の14.5倍以上にあたる数字です(令和元年の特殊詐欺の被害総額は約316億円)。
これをみれば、万引きの被害総額がどれほど大きいかがわかることでしょう。
「保険で保証される」という認識も間違いで、実際には店舗の「盗難保険」は万引き被害には対応していないことも多く、店側が万引きによって甚大な被害を受けている現状があります。
実際に万引き被害によって倒産をよぎなくされた店もあり、その被害は非常に深刻です。倒産して経済的に困窮してしまえば、その後の経営者の選択が悲劇的なものになってしまう可能性があることは、だれでもイメージできることでしょう。
万引きは、決して「軽い犯罪」でもなければ、「だれも傷つけない犯罪」でもありません。出来心で、スリルを求めて、あるいは単純に「ここの店ならできそうだと思ったから」という気持ちで万引きしたことが原因で、その店がなくなってしまう可能性は十分にあるのです。
万引きは盗難であり、取り締まられるべき犯罪だといえます。
出来心では済まされない! 万引きでの逮捕もある
「万引きは、見つかっても謝れば大丈夫」「万引きで逮捕されることはない」「万引きは軽微な犯罪だから、説諭までで済まされる」と考えている人間の数は、それほど少なくはありません。
しかしこの認識は誤りです。万引きは犯罪ですから、当然万引きをしたら逮捕されることもあります。
上でも述べましたが、万引きの検挙率は実に70パーセント近くに達しています(平成29年のデータでは69.7パーセントですが、平成20年は72.8パーセントになっています)。つまり、警察が「万引き事件だった」と判断したうちの7割近くは犯人の特定-検挙に至っているということです。
もちろん、警察が認知していない万引き事件もあるでしょう。また、万引き犯が分かったとしても逮捕にまで至らないこともあります。しかしそれでもこの「検挙率70パーセント」という数字は決して少なくないといえます。
「万引きは、店の人に気づかれずに外に出られたら成功」と考えている人間もいるかもしれません。たしかに現行犯逮捕(店員やお客さん、あるいは警備員による私人逮捕)は言い逃れのできないものです。なお、見つかったときに抵抗して相手にけがを負わせた場合、強盗致傷に問われることもあります。
しかしたとえその日に見つからなくても、後日になって逮捕されるケースはあります。今はどこの店でも防犯カメラを導入しているため、「在庫数が合わない」ということで防犯カメラをチェック→犯人の特定→逮捕に至ることも多いといえます。
場合によっては、警察が逮捕令状を持参して家にまでやってきて逮捕されることもあります。
「払えば終わり」ではない~万引きと刑事罰
逮捕された場合であっても、「微罪処分」として釈放される場合もあります。被害総額が少ない(一般的に2万円以下とされる)・再犯の可能性がない・普段はしっかりしており、出来心での窃盗だった・店側が温情処置を望んでいるなどの場合は、検察に送致されずに済むことがあります。
ただしこの割合はそれほど高くはなく、全体の4割程度だとされています。半数以上は検察官送致処分となります。
ちなみに起訴された場合は、99.9パーセントで有罪になります。
また、万引きは「窃盗犯」として位置づけられています。このため、刑罰も当然存在します。最低1か月の懲役刑が科せられますし、長い場合は10年間の懲役を務めなければなりません。罰金刑の場合は、最低で1万円、最大で50万円の支払いが命じられます。
懲役刑や罰金刑が科せられた場合は「前科がついた状態」となるため、就職や結婚などのときにマイナス評価される可能性が極めて高いといえます。
このように、万引きは決して「軽い犯罪」ではないのです。
「見つかっても、謝ってお金を支払えば終わり」というものでもありません。特に現在では万引きに対して苛烈な処罰をすることを明言している店も多く、厳しい視線が注がれています。
もしご家族が万引きで捕まった場合、速やかに弁護士に相談してください。また、「出来心で万引きをしてしまったがどうすればよいか迷っている」という場合も、弁護士事務所の扉を叩いてください。一緒に解決策を考えていきましょう。