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覚せい剤で逮捕……その刑罰と弁護、立ち直りのためにできること

山下江法律事務所

 覚せい剤を使った芸能人やスポーツ選手の逮捕の報道を、耳にしたことがない人はいないでしょう。
 覚せい剤(覚醒剤)・麻薬は、人の人生そのものを壊してしまうとても危険なものです。

 覚せい剤は、麻黄(まおう)と呼ばれる植物から取られるもので、人の神経に作用します。これを使うことで頭がさえわたったり、疲れが出なくなったり、眠気が消えたりするような感覚を得られます。しかしこれはあくまで一時的なもの(数時間程度とされています)、効果が切れた後は、異常な脱力感やだるさを感じるようになります。

 覚せい剤の恐ろしいところは、その依存性にあります。一度使ってしまうと本人が「やめよう」と思ったとしてもその強烈な依存性によって、何度も覚せい剤を使用することになってしまいます。そして覚せい剤を何度も使用することにより、幻聴や幻覚、妄想が生まれます。異常な行動をとるだけでなく、人に危害を加えたり、意識が混濁したりするようになるのです。
 自分自身の命だけでなく人の命までをも奪いかねない覚せい剤は、決して自分の意思でコントロールすることはできません。そのため覚せい剤の使用は禁止されており、使用すると罰則が加えられます。

 ※この記事では特に断りがない限り、「覚せい剤・麻薬」は、違法性のあるものを指しています。医療目的で使われる合法の覚せい剤・麻薬については除外します。

覚せい剤関係で逮捕……その刑罰について

 覚せい剤関係での逮捕は、大きく4つのパターンに分けられます。

 1.自分が利用する目的で覚せい剤を持っていた場合
 2.覚せい剤を製造したり、輸出入をしていたりする場合
 3.お金儲けの目的で覚せい剤を持っていた場合
 4.お金目的で覚せい剤を製造したり、輸出入をしていたりする場合

 パターンによって刑罰の重さは異なります。

 1.自分が利用する目的で覚せい剤を持っていた場合・・・10年以下の懲役刑(有期)
 2.覚せい剤を製造したり、輸出入をしていたりする場合・・・1年以上の懲役刑(有期)
 3.お金儲けの目的で覚せい剤を持っていた場合…1年以上の懲役刑(有期)、これに加えて500万円以下の罰金が科せられることもあります
 4.お金目的で覚せい剤を製造したり、輸出入をしていたりする場合・・・3年以上の懲役刑で、無期懲役が科せられることもあります。また、これに加えて、1000万円以下の罰金が科せられることもあります

 特に4の場合は悪質性が高いと判断されます。ほかの3つの場合は有期懲役刑が選択されますが(ただし執行猶予期間が設けられることもある)、4のケースでは無期懲役が科せられることもあるのです。

弁護士に依頼する意味とは

 覚せい剤関係の逮捕であっても、「無罪だった」と認められるケースもあります。たとえば、「空港で覚せい剤所持で逮捕されたが覚せい剤を仕込んだのは別の人間であり、捕まった人は本人が知らないまま運び屋として利用されていた」というようなケースです。このような「捕まったけれど、覚えがない。無罪だ」という場合は、弁護人の弁護が非常に大きな役目を果たします。
 実際、このケースでは無罪判決も出ています。

 また「身に覚えがある」という状況で捕まったときにも、弁護人は依頼者のために動きます。

 覚せい剤の単純所持の場合、執行猶予がつけられることもあります。執行猶予とは、「懲役刑を科す判決ではあるが、決められた年数を正しく過ごすこと(禁錮以上の刑に科せられないなど)ができれば、刑罰を受けずに済むよ」という制度です。特に初犯の場合はこの執行猶予を獲得できる確率が高くなります。

 加えて、弁護人が付くことで早期釈放を可能にすることができるようになる場合もあります。
 覚せい剤で逮捕された場合は勾留(身柄を拘束されること。起訴前で最大23日間)されることが多いですが、弁護人が働きかけることでこの期間を短くできる可能性があるのです。

 また弁護士が付くことで、逮捕された人やその家族が冷静に物事にあたることができるようになります。現在の状況はどうなっているのか、問題点はどこなのか、どのようにして釈明をしていったらいいのかなどをまとめることができます。

 有罪か無罪かを争うため、行為に適した処罰にするため,勾留期間を短くしたりするため、また状況の整理などにあたるために、弁護人は動きます。
 弁護士は依頼者の利益を考えて働く立場にあります。担当弁護士を信頼し、覚せい剤の使用や所持、あるいは製造に至った経緯や状況などをすべて話し、納得のいく判決を勝ち取りましょう。

「罪が軽くなった」で終わりではない~覚せい剤からの立ち直りのために

 「覚せい剤で逮捕されたが、刑罰は軽かった。執行猶予もついたし、自分の生活は何も変わらない」……このように思うのは、極めて危険なことです。

 覚せい剤での逮捕は、「罪が軽くなった」「執行猶予がついたから、これで大丈夫」というものではありません。逮捕を、「覚せい剤を断つための大きなきっかけ」ととらえる必要があります。

 上でも述べた通り、覚せい剤は依存性があります。薬物に対する依存症は、一度使ってしまえば一生治ることのないものです。覚せい剤で1度逮捕された人が、2度3度と捕まった……という報道を見ることは、決して珍しくありません。

 もっとも重要なのは、「1回目の逮捕で自らを見直し、覚せい剤を断ち切ること」です。これは自分自身の意志だけでできることではありませんから、薬物依存症から立ち直るための施設(日本ダルクなど)を利用し、依存症からの回復をはかりましょう。

 また、薬物依存症を加速させるものとして「誤った対応を行う家族」もあげられます。しりぬぐいをしたり感情的に怒鳴ったりすることは、状況を悪化させます。そのため薬物依存症になった当人だけでなく、家族も勉強をし、同じ立場にある人たちと話し合うことも重要です。

 覚せい剤は、たった1度の使用でその後の人生を丸ごと破壊するものです。そしてそのときに破壊される人生は、覚せい剤使用者のものだけにとどまりません。周りの人間の人生をも壊してしまうものですから、「執行猶予がついてよかった」と考えるのではなく「二度と薬物に手を染めないための取り組み」を一生涯にわたって行っていくことが重要です。

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