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横領罪…その意味と罰則について

山下江法律事務所

 「会社の人間が横領をした」「魔がさして横領してしまった」このような場合、法律的にはどのように判断されるのでしょうか。それについて解説していきます。

横領罪とは何か

 まず、「横領罪とは何か」について解説していきます。

 横領の罪は、刑法第38章に規定されている罪のことです。横領とは、ごく簡単にいえば、「他者の財物を自分で保管していた場合において、その財物を不法な手段において自分の物にすること」をいいます。

 これは「単純横領罪」と「業務上横領罪」、そして「遺失物等横領罪」の3つに分けられます。1つずつ見ていきましょう。

 単純横領罪・・・「自分が保管している他人の物を、不法な手段で自分の物にしたとき」には単純横領罪に問われます。たとえば、「友達から借りていた洋服を、無断で古着屋に売り払った」などのようなケースがこれに該当します。

 業務上横領罪・・・「横領罪」と聞いたときに多くの人がイメージするのが、この「業務上横領罪」かもしれません。これは、「業務の上で自分が管理している財物を、不法な手段で自分の物にしたとき」に適用されるものです。たとえば経理を担当している人間が、店の売上金を自分の物にした……などのようなケースがこれに該当します。

 遺失物等横領罪・・・意外と知らない人もいるのですが、実は、「落とし物を見つけたときに、正規の手続きを踏まず、それを自分の物にしたとき」も罪に問われます。たとえば、「道を歩いているときに財布を見つけたが、警察に届けを出さず、自分のものにした」などのようなケースがこれに該当します。ちなみに、この遺失物等横領罪は、「占有離脱物横領罪」とも呼ばれます。

 「業務上横領罪」などは比較的イメージがしやすく、これが犯罪えあることは比較的わかりやすいでしょう。しかし単純横領罪や遺失物等横領罪の場合は、犯罪に当たることのイメージつきにくく、犯罪だと認識していない人もいるかもしれません。たとえば身近な例としては、「図書館から本を借りていて、貸出期間が過ぎ、かつ何度も返却請求が来ているにもかかわらず無視していた」などのようなケースでも横領罪に問われることがあるのです。

 横領罪が成立するためには、不法領得の意思(正当な権利者を排除して自分の物にしようとする意思と、経済的な用法によって処分したり利用しようとしたりする意思)が必要です。そのため、たとえば、「落とし物を拾って警察に届けようと思っていたけれど、急を要する用事があり、警察に届けることができたのは拾ってから半日以上経ってからだった」などのような場合においては、遺失物等横領罪に問われることは通常ありません。

横領罪と背任罪の違い、横領罪と詐欺罪の違いについて

 ここまで「横領罪」について解説してきましたが、横領罪とよく混同されがちな犯罪があります。それは、「背任罪」と「詐欺罪」です。横領罪と背任罪の違い、横領罪と詐欺罪の違いについて解説していきます。

・横領罪と背任罪の違い

 横領罪とは、「自分が保管している他者の財物を、不法な手段で自分の物にした場合に問われる罪」をいいます。これに対して背任罪は、「自分や第三者のためを目的として、会社に損害を与えたときに問われる罪」です。

 たとえば、業務上横領罪の場合は「会社のお金を自分の口座に移した」などが該当しますが、背任罪の場合は「一般常識的にみて不当に高い物を会社のお金で購入した」などが該当します。
横領罪と背任罪のいずれも成立しうる場合、両罪は法条競合(ほうじょうきょうごう。1つの犯罪行為が、2つ以上の刑罰法規に抵触する場合であっても、1つの法規だけが適用されることをいう)にあたり、多くは横領罪の方が重い罪であるため、「横領罪にあたらない」と判断されて初めて、「背任罪に当てはまるかどうか」を検討することになります。
 また、背任罪の場合は、「不法領得の意思」がなくても成立する罪です。そのため、その行動によって自己が利益を得なくても(また利益を得ようとしなくても)、背任罪に問われることはあります。たとえば「今の上司が気に食わないから、上司の成績を悪くするために不当に高い金額で仕入れてやろう」などと考えた場合、横領罪には問われなくても背任罪に問われることがあります。

・横領罪と詐欺罪の違い

 横領罪と詐欺罪の違いについても見ていきましょう。

 詐欺罪とは、「人をだまして財物を取ったり、財産上の利益を得たりする行為」をいいます。詐欺罪の代表例としては無銭飲食などが挙げられますが、横領罪と比較する場合は、「取引先をだまして、自分の口座にお金を振り込ませた」などのようなたとえがわかりやすいでしょう。取引先をだまして錯誤に陥れ、会社の口座ではなく自分の口座に振り込ませた場合などは、横領罪ではなく、詐欺罪に該当する可能性が高いといえます。

 対して、「自分の口座に入れる」という結果は同じであっても、「取引先が正規の手段で会社の口座に振り込んだお金を、経理担当者が自分の口座に入れた」などのような場合は横領罪に問われることになります。

横領罪の法定刑について

 最後に、横領罪の法定刑について解説していきます。このときには、「横領罪とは何か」で解説した横領罪の3種類の違いが重要になってきます。どのような種類かで判断が異なるのです。

 単純横領罪・・・5年以下の懲役
 業務上横領罪・・・10年以下の懲役
 遺失物等横領罪・・・1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料(※「科料」とは1,000円以上で10,000円を上限とする。対して罰金は10,000円以上となる)

 遺失物等横領罪の場合は罰金(科料)で済むこともありますが、それ以外の2つは懲役刑に科せられる可能性があります。また業務上横領罪の場合は単純横領罪よりも被害額が大きくなりやすく、弁償ができない場合は実刑判決(※執行猶予がつかない)に処される可能性が高くなります。

 ただし早い段階で弁護士に相談をし、示談で和解に至ることができれば、不起訴となる可能性もゼロではありません。特に業務上横領罪の場合、「自社内に横領をする社員がいた」ということが企業イメージを損ねる……と企業側が判断した場合、和解交渉の席についてくれることもあるでしょう。いずれにせよ、加害者だけで解決するのは困難です。そのため早い段階で弁護士の助けを借りるようにしてください。

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